秋の登山で迷うのは、「何℃だから何を着るか」ではありません。朝と昼で、着るものが変わってしまうこと。登山口では暖かかったのに、稜線に出たら風が冷たくて手がかじかむ。逆に着込んで登ったら30分で汗だくになって、休憩したとたんに震える。秋はこの両方が、同じ日の同じ山で起きます。
先に結論をお伝えします。秋の登山の服装は、上半身3枚+防寒着1枚。決める基準は気温そのものではなく標高差です。同じ「最高気温22℃」の予報でも、1,000mの山と2,000mの山では体感が10℃近く違うからです。
この記事では、アイテムごとに選び方の要点と代表モデルを紹介しています。レディースの方には、メンズとの違いと女性向けモデルをまとめた章も用意しました。秋の登山を楽しむために服装選びの参考にしてみてください。
秋の登山の服装は「3枚+防寒1枚」。気温より標高差で決める。

秋の登山の服装は、この4つで組み立てます。
役割 | 何を着るか | いつ着ているか |
1枚目:ベースレイヤー | 汗を肌から離す長袖シャツ | ずっと着ている |
2枚目:ミドルレイヤー | 薄手フリースなど、空気をためて温める1枚 | 寒い時間帯・止まっているとき |
3枚目:アウター | 風を止める上着(ウインドシェル/レインウェア) | 風が出たら羽織る |
+防寒着 | ダウンや化繊の中綿ジャケット | 山頂・休憩・下山後の待ち時間だけ |
大事なのは、4枚をずっと着ているわけではないということ。歩いているときは1枚目だけ、風が出たら3枚目を足す、山頂で止まったら防寒着を出す。だから「暖かい服を買う」より、脱ぎ着しやすい組み合わせを持っていくほうが効きます。そして天気予報が出すのは平地の気温。「明日は22℃だから半袖でいいかな」と考えると、山頂で凍えます。
秋の登山で起きること|朝と昼で10℃、風で体感5℃
山の上の気温を知るために覚える計算式はひとつだけです。
山の上の気温 = 平地の予報気温 −(標高 ÷ 100 × 0.6℃)− 風速(m/s)
100m登るごとに約0.6℃下がり、風速1m/sごとに体感がさらに約1℃下がります。平地の予報が18℃、標高1,500m、稜線の風が5m/sなら、18℃ − 9℃ − 5℃ = 体感4℃。平地は過ごしやすいのに、山の上は真冬の朝のような寒さです。
標高別の気温の目安

気象庁が公表している東京(標高25m)の平年値を起点に計算しました。
月 | 日平均 | 日最高 | 日最低 |
10月 | 18.0℃ | 22.0℃ | 14.8℃ |
11月 | 12.5℃ | 16.7℃ | 8.8℃ |
これを100mあたり0.6℃で標高分だけ引くと、こうなります。
標高 | 10月 日中 | 10月 朝晩 | 11月 日中 | 11月 朝晩 |
1,000m | 16.1℃ | 9.0℃ | 10.8℃ | 3.0℃ |
1,500m | 13.2℃ | 6.0℃ | 7.8℃ | 0.0℃ |
2,000m | 10.2℃ | 3.0℃ | 4.8℃ | −3.0℃ |
2,500m | 7.2℃ | 0.0℃ | 1.8℃ | −6.0℃ |
同じ10月でも1,000mの朝は9℃、2,000mの朝は3℃。この6℃差が、防寒着を持つか持たないかの分かれ目です。この表は東京の平年値を起点にした目安なので、関東以外の方は登山口に近い地点の予報から同じ計算をしてみてください。多くの山では山頂の平年値そのものが存在しないので、自分で計算するのが確実です。
体感温度と、必要な装備
体感温度 | 目安になる条件 | 必要な装備 |
15℃前後 | 10月・1,000m・日中 | ベースレイヤー+薄手長袖。行動中はこれで足ります |
10℃前後 | 10月・2,000m日中/11月・1,000m日中 | +ミドルレイヤー(薄手フリースなど) |
5℃前後 | 10月・1,500m・朝晩 | +ウインドシェル。休憩時に防寒着 |
0℃前後 | 11月・1,500m・朝晩 | 防寒着は必須。手袋・ニット帽も |
−5℃以下 | 11月・2,000m・朝晩+風 | 冬装備に近い。初心者は避けたい時間帯 |
体感温度ごとの具体的な組み合わせは、春から冬まで通しで整理した記事があります。気温の帯で探したい方はこちらへ。
秋の登山におすすめの服装まとめ
部位ごとに、標高別で何が要るかをまとめました。
部位 | 1,000m前後(10月:日中16℃/朝9℃) | 1,500m前後(日中13℃/朝6℃) | 2,000m前後(日中10℃/朝3℃) |
ベースレイヤー | 長袖1枚 | 長袖1枚 | 長袖1枚+汗の多い人はメッシュ |
ミドルレイヤー | 休憩用に薄手フリース | 朝と休憩で薄手フリース | 着たまま歩ける通気タイプ |
アウター | レインをザックに | ウインドシェルを羽織る | ウインドシェル+レイン |
パンツ | 裏地なし薄手 | 裏地なし+薄手タイツ | 裏地なし+タイツ |
防寒着 | なくても可(11月は持つ) | 軽いものを1枚 | 必須。山頂で着る前提 |
小物 | ニット帽をザックに | ニット帽・薄手グローブ | 耳まで覆う帽子・グローブ・ウール靴下 |
そして全部に共通する条件が「綿はNG」。綿のTシャツやパーカーは汗を吸ったあと乾かず、濡れた生地が体温を奪い続けます。秋の山でいちばん多い失敗が、これです。
ベースレイヤー|秋のいちばん重要な1枚
ベースレイヤーとは、肌に直接触れる1枚目のシャツのこと。秋の寒さの多くは「汗冷え」から来るので、ここがいちばん重要です。登りで汗をかく→休憩で止まる→濡れたシャツが冷える。この流れを止められるかで決まります。
要点は3つ。長袖が基本、素材はウール(メリノウール)か化学繊維、そして汗の量が多い人は「0枚目」のメッシュを足す。ウールは汗を吸っても冷えにくく、化繊は乾くのが速い。汗をかきやすい人ほど「汗を肌から離す仕組み」で選ぶと失敗しません。
〜秋の1枚目をこれから揃える人に〜『山旅 バックメッシュ・アクティブメリノ・ロングスリーブシャツ』

税込14,990円、平均140g。サイズはXS・S・M・L。背中側がメッシュになっていて、ザックの下でいちばん蒸れる場所から熱を逃がします。ウールの「濡れても冷えにくい」良さとメッシュの「乾きの速さ」を1枚で持っているので、10月の低山から11月の小屋泊まで、秋はこれを軸に組み立てられます。
〜汗の量が多い人に〜『ミレー ドライナミック メッシュ』

税込6,600円。網目の粗いメッシュを肌に直接着て、汗を上のシャツへ押し出す「0枚目」のウェアです。休憩のたびに背中が冷える人には効果がはっきり出ます。上に着るシャツは手持ちのままでいいので、買い替えずに汗冷えを減らせます。
〜予算を抑えて化繊を試したい人に〜『パタゴニア ロングスリーブ キャプリーン クール デイリー シャツ』

税込8,250円。薄手で乾きの速い化繊シャツです。ウールほどの保温はありませんが、10月前半の低山なら薄手フリースを足す組み立てで十分。「まず綿をやめる」ための最初の1枚として、手を出しやすい価格です。
ミドルレイヤー|脱ぎ着で温度を合わせる2枚目
ミドルレイヤーは空気をためて体温を保つ2枚目。秋は薄手のフリースか、通気性の高い起毛素材が使いやすいです。厚い1枚より薄手を脱ぎ着するほうが温度を細かく合わせられ、前開き(フルジップ)なら歩きながら首元を開けて熱を逃がせます。
見るポイントは「着たまま登れるか」。着たまま歩ける通気性があるモデルなら、脱ぎ着の回数そのものが減ります。
〜ミドルレイヤーの重さを減らしたい人に〜『山旅 POLARTEC アルファダイレクト90 ULジャケット』

税込18,990円、133g。サイズはS・M・L。起毛した生地そのもので保温するタイプなので通気性がとても高く、着たまま登っても熱がこもりにくくなっています。秋のミドルレイヤーで133gは大きな武器。ザックに入れっぱなしにしても重さで迷いません。
〜秋から春まで長く使いたい人に〜『パタゴニア R1エア フルジップ』

税込28,050円。通気性と速乾性に振ったフリースで、登りで汗をかいても着たままいられるのが最大の利点です。価格は上がりますが、秋だけでなく春や初冬まで出番が続きます。
アウター|ウインドシェル・ソフトシェル・レインの使い分け
秋のアウターの役割は、保温ではなく防風です。稜線で風速5m/sなら体感−5℃。これを止めるだけで5℃戻るので、防風の1枚は保温着より効きます。
アウターは3種類あって、役割が少しずつ違います。
- ウインドシェル:風を止めるだけの薄い上着。軽くて着たまま歩ける。天気が読めている日帰りの主役
- ソフトシェル:伸びる生地の防風上着。フリースの風抜けを止めたいとき、ミドルレイヤーの代わりにもなる
- レインウェア:雨と風を止める。汗の蒸気を逃がす力は劣るので、行動中に着っぱなしにはしない
天気が安定した日帰りならウインドシェル、天気が怪しい日や標高の高い山ならレインウェアを風よけ兼用に。ウインドシェルは「軽さで選ぶか、価格で選ぶか」でモデルが分かれるので、候補は章末の記事で比べてください。
〜雨具と風よけを1着で済ませたい人に〜『モンベル ストームクルーザー ジャケット Men's』

税込22,000円。自社の防水素材「スーパードライテック」を3層に重ねたレインウェアです。秋は風よけとして着る場面も多いので、日帰りならウインドシェルを省略してこれだけ持っていく選択もできます。標高1,500m以上や天気が変わりやすい時期は、これを軸に組み立てるのが安心です。
〜ウインドシェルを1枚だけ持つなら〜『パタゴニア メンズ・フーディニ・ジャケット』

税込16,500円。ポケットに収まるほど小さくたためるウインドシェルの定番です。秋の稜線で風に当たったとき、レインウェアを出すほどではない場面に、これを1枚はおるだけで体感がまるで違います。行動中に着たままでも蒸れにくいので、脱ぎ着の回数が減ります。
パンツ|秋は「裏地なし+タイツで調節」
秋のパンツは、裏地なしの薄手ストレッチが基本です。歩いていれば脚は発熱するので、裏起毛は暑すぎることが多いんです。寒ければタイツを下にはけば調節できますが、裏起毛は暑くなっても脱げません。ただしタイツは山の途中で脱げないので、厚手ではなく薄手を選び、調整は外側のパンツとアウターでする。これが秋のパンツの組み立て方です。
〜11月の高い山、朝の冷え込みが苦手な人に〜『C3fit インパクトエアー ロングタイツ』

税込17,050円。裏地なしのパンツの下にはくタイツです。脚の冷え対策になるだけでなく、着圧で筋肉を支えてくれるので下りの疲れも軽くなります。晩秋に1,500m以上へ行くなら、パンツを厚くするよりタイツを1本足すほうが昼の暑さにも対応できます。
〜秋の主力に〜『モンベル O.D.パンツ ライト Men's』

税込8,900円、303g。裏地なしの薄手で、軽くてストレッチが効くので、段差の大きい登山道でも脚が上がります。サイズはXSからXXLまで。1万円以下で最初の1本として選びやすく、寒い日はタイツを1枚足せば11月まで使えます。
防寒着|ダウンか化繊か。休憩中の保温に。
防寒着は、歩いているときには着ないものです。山頂で休むとき、昼食をとるとき、下山後にバスを待つとき。止まっている時間のために持っていくので、選ぶ基準は「暖かさ」より畳んだときの小ささと軽さ。そのうえで中綿の種類を決めます。
- ダウン:軽くて暖かく、小さく畳める。ただし濡れると保温力を大きく失う
- 化繊(化学繊維の中綿):ダウンより少し重いが、濡れても保温力が残る。汗で湿りやすい人、雨の可能性がある日はこちら
晴れの日が多いならダウン、雨や汗の濡れが心配なら化繊。この対比で決めれば迷いません。
〜山頂でゆっくり過ごす人、11月の高い山に登る人に〜『モンベル パーマフロスト ライトダウン』

税込31,900円。秋の日帰り用としては厚みのある部類ですが、山頂で30分以上過ごす人や、11月に標高2,000m前後へ行く人には、この暖かさが効きます。
〜濡れが心配なら化繊〜『モンベル U.L.サーマラップ ジャケット Men's』

税込17,050円、229g。中綿が化学繊維なので、多少濡れても保温力が落ちにくいのが利点です。雨の可能性がある日や、汗をかいたまま休憩に入る場面では、ダウンよりこちらのほうが安心して着られます。
帽子・グローブ・靴下|費用対効果はここがいちばん
体の末端は冷えやすく、しかも小物は軽くて安い。費用対効果がいちばん高いのが、実はここです。 帽子は「耳が隠れるか」、グローブは「手袋のままスマホの地図が見られるか」、靴下は「ウール混か」。綿の靴下は汗で濡れて靴擦れの原因になります。
〜風の強い稜線を歩く人に〜『モンベル メリノウール ニット 2way キャップ』

税込4,730円、男女兼用モデルです。普通のニット帽として使えるほか、下に伸ばしてバラクラバ(顔まで覆う形)に変形できます。晩秋の稜線で風が強いとき、顔まで覆えるかで体感がまるで変わります。
〜落ち葉の積もった道を歩く人に〜『ザ・ノース・フェイス トレッカーズゲイター』

税込11,000円。ゲイターは、靴とパンツの間から小石や落ち葉、泥が入るのを防ぐカバーです。秋の登山道は落ち葉が積もり、その下がぬかるんでいることがよくあります。雨上がりの山を歩く人には、秋こそ出番の多い小物です。
〜朝の冷えから手を守る〜『モンベル トレールアクション グローブ Men's』

税込2,970円、38g。薄手のストレッチ素材で、登り始めの冷えた時間帯に手の甲をカバーします。スマホのタッチパネル操作に対応しているので、地図アプリを見るたびに外さなくて済みます。日が上がったらポケットに入る軽さです。
レディースの秋登山|メンズとの違いと選び方
ここまでの組み立て方は、レディースもまったく同じです。違うのは体型に合った作りと、冷えの優先順位の2点。女性用のウェアは単に小さいだけではなく、肩幅・胸まわり・腰まわりの比率も丈も違うので、メンズのSサイズだと袖が余ったり腰まわりがぶかついたりします。そして一般に女性のほうが末端が冷えやすいので、グローブ・ニット帽・靴下の優先度が上がります。部位ごとの違いと、女性向けの代表モデルを挙げていきます。
ベースレイヤー|首の開きと丈、透けにくさ
首まわりの開きが広すぎると稜線で冷え、丈が短いとザックを背負ったとき背中が出ます。メンズ章の山旅アクティブメリノはXSから展開があり、女性が着ることも想定された作りです。
〜女性のための機能的で快適なサンフーディー〜『山旅 Ridge Merino ライトウェイト・ナイロンコアメリノフーディ Women"s』

税込18,900円、XSとSの展開でSは221g。フード付きで首から後頭部まで守れ、UPF35+の紫外線対策とサムホール付きです。
〜休憩時の汗冷えに毎回悩んでいる人に〜『ファイントラック ドライレイヤーウォームLS WOMEN'S』

税込6,589円、75g。ベースレイヤーの下に着る「0枚目」で、メンズ章のミレーと同じ役割を女性用の作りで果たします。手持ちのシャツを買い替えずに汗冷えを改善できます。
ミドルレイヤー|サムホールがあると手首が暖かい
袖口に親指を通す穴(サムホール)があると、朝の冷え込んだ時間帯に手首から手の甲まで覆えます。
〜ミドルレイヤーをはじめて買う人に〜『モンベル クリマプラス100 ジャケット Women's』

税込8,100円、290g。袖口のサムホール付きで、1万円以内で揃います。メンズ章の山旅やパタゴニアが「軽さ・通気性」で選ぶモデルなら、こちらは「予算」で選ぶ入門機です。
アウター|丈が長めだとお尻まで守れる
女性用のアウターは丈がやや長めのものが多く、腰まわりの冷えを防げます。レインウェアはメンズ章のストームクルーザーにWomen"sモデル(税込21,000円・225g)があります。
〜軽くて小さいものが欲しい人に〜『パタゴニア ウィメンズ・フーディニ・ジャケット』

税込16,500円。ウインドシェルの定番で、自分のポケットに畳んで収納できます。秋の稜線では、着るまでの手間が短いほど実際に着ます。
パンツ|腰まわりの作りが違う
女性用のパンツは腰まわりと股上の作りがメンズと別なので、ここは必ず女性用から。裏地なしの薄手+タイツの組み立てはメンズと同じです。
〜登山用パンツをはじめて買う人に〜『モンベル O.D.パンツ ライト Women's』

税込8,400円、280g。裏地なしの薄手で、軽くてストレッチが効くので、段差の大きい登山道でも脚が上がります。10月から11月前半の低山~中級山岳なら、薄手タイツを合わせるだけで秋を通せます。1万円以下で、最初の1本に選びやすい位置です。
防寒着|軽さ優先。ザックに入る大きさか
日帰り中心なら「持っていくのを迷わない軽さ」を優先。濡れが心配なら化繊です。
〜雨や汗で濡れる可能性がある日に登る人に〜『パタゴニア ウィメンズ・ナノ・パフ・ジャケット』

税込33,550円。化繊の中綿ジャケットの代表格で、濡れても保温力が落ちにくく、雨具の下に着ることもできます。メンズ章のダウンが「晴れの日・長い停滞」向きなら、こちらは「天気が読めない日」の1枚です。
帽子・グローブ・靴下|帽子だけ事情が違う
登山用の帽子には、Women"s表記の製品がほとんどありません。秋冬用のニット帽はどれも男女兼用なので、「レディースを探す」のではなくサイズ展開から自分の頭に合うものを選ぶのが正解です。グローブと靴下は女性用があるので、そちらを。
〜靴擦れと足の冷えをまとめて減らしたい人に〜『ダーンタフ 1907 ハイカー ブーツソック ウィメンズ』

税込4,400円。生涯保証で知られるメリノウール混の靴下で、綿の靴下から替えるだけで足のトラブルはかなり減ります。ウール混は汗を吸っても冷えにくいので、秋の朝の冷えた登山靴の中でも足先の感覚が残ります。
秋の登山でやりがちな失敗3つ

失敗1:汗冷え──いちばん多い失敗です
登りで汗をかき、休憩で止まったとたんに体が冷える。 原因はたいてい、着ているシャツにあります。綿は汗を吸ったあと乾かず、濡れた生地が風にあたるたび体温を奪います。対策は3つ。シャツをウールか化学繊維に替える(いちばん確実)、0枚目のメッシュやドライレイヤーを足す(買い替えずに改善できる)、登りのペースを落とす(息が上がらない速さなら汗冷えは起きない)。そして、止まる直前にアウターを1枚羽織る。止まってから着るのでは、もう体が冷え始めています。
失敗2:防寒着を「重いから」と置いてくる
秋は歩いていれば暖かいので、必要性を実感しにくいんです。でも防寒着が要るのは、山頂で景色を見ているとき、昼食をとるとき、道に迷って立ち止まっているとき。止まっている時間です。しかも1時間遅れた、足をひねった、バスが来ない、と止まる時間は予定どおりにいきません。対策は、軽い防寒着を選んで、ザックに入れっぱなしにすること。重いと毎回迷いますが、ペットボトル1本より軽ければ迷いません。
失敗3:レインウェアを風よけと兼用して、どちらも中途半端になる
「レインウェアがあれば風も防げるから、ウインドシェルは要らない」──半分正しくて、半分は落とし穴です。風は止まりますが、防水性が高いぶん汗の蒸気が内側にこもりやすいので、行動中に着ると汗で濡れて結局は汗冷えにつながります。ウインドシェルは風を止めながら通気性があるので、着たまま歩けます。役割が違うんです。天気が安定した日帰りはウインドシェルで歩いてレインはザックの中、天気が読めない日はレイン1着に絞る、泊まりや2,000m以上は両方持つ、と使い分けてください。
もうひとつ、防水性能は使っているうちに落ちます。 久しぶりのレインウェアは一度シャワーをかけて、水が染み込むようなら撥水剤で処理するか買い替えどきです。
秋の登山の服装に関するよくある質問

Q1. 10月の登山にダウンジャケットは必要ですか?
登る山の標高で決まります。 1,000m前後の低山を日中に往復するなら不要なことが多く、フリースとレインウェアで足ります。1,500m以上なら持っていくことをおすすめします。日中13℃前後でも、風が5m/s吹けば体感8℃。2,000m以上、または11月に入ってからなら必須と考えてください。 濡れる可能性がある日は、ダウンより化繊の中綿のほうが安心です。
Q2. ユニクロやワークマンの服で登れますか?
山と条件を選べば、登れます。 1,000m前後の低山、10月の日中、天気が安定している日。この条件なら、雨具は上下セットで税込5,500円のレディースイナレム レインスーツ WNR001A(ワークマン)、休憩用の防寒着にユニクロのウルトラライトダウン(ウィメンズ税込7,990円)という組み立ては成立します。イナレムの耐水圧20,000mmは登山用としても通用しますが、汗の蒸気を逃がす力や耐久性は登山メーカーのものに及びません。標高が上がる、風が強い、11月に入る、となると差が出ます。そして綿の服だけは避けてください。 進め方は、レインウェアと靴だけ登山用を揃えて、残りは手持ちで始めるが失敗しにくいです。
Q3. 雨の日はどうすればいいですか?
上下セットのレインウェアを着て、その下は濡れても冷えない素材にします。 秋の雨は気温が低いので、濡れたまま風にあたると体温が急激に下がります。パンツが濡れると太ももから体温が抜けるので上下そろえる。下は綿以外にする。そして着替えを1セット、防水袋に入れて持っていく。秋は日が短いので、無理に登らない判断も含めて考えてみてください。
Q4. レディースとメンズで、選び方は何が違いますか?
基本の考え方は同じです。違うのは「体型に合った作り」と「冷えの優先順位」の2点。 とくにベースレイヤーとパンツは女性用から選ぶ価値があり、帽子だけは男女兼用が標準なのでサイズ展開から選んでください。詳しくはこの記事のレディース章へ。逆にメンズ側で意識したいのは汗の量。汗を多くかく人は、保温より「汗を素早く処理すること」を優先したほうが暖かく過ごせます。
Q5. 春の登山も、同じ考え方でいいですか?
基本は同じです。3枚+防寒1枚、標高差で計算する。 ただ、春には秋にない要素が3つ加わります。残雪(高い山では5月でも雪が残り、足元から冷える)、泥(雪解けで登山道がぬかるみ、ゲイターの出番が増える)、気温の振れ幅(日によって10℃以上違うので、直前の予報確認がより重要)。組み立て方そのものは秋と同じなので、この記事の考え方をそのまま使ってもらって大丈夫です。


