アメリカのカスケードデザイン社は1969年からスタートしたMSR、1972年からスタートしたサーマレスト、その他プラティパスやパックタオルなど、登山者にはお馴染みのブランドを束ねる企業です。
そんな大きな企業だからできる、メーカーをまたいだユニークなギミックが備わったMSRの新作テントとサーマレスとの新作エアマットを今回紹介します。

MSRからは軽量性と広々とした空間が魅力の「ハバハバLT」。

サーマレストからは厚さ11.7cmの「アウトドアでの快適な睡眠」を追求したエアーマットレス「ネオロフト」。
この2つのテントとエアマットを組み合わせることで、快適な空間と極上の寝心地を、山中で楽しむことができます。今回はそれぞれのアイテムのスペックと特徴、そして実際に登山で使用してみてのレビューをしていきます。
MSRの山岳向け1人用新作テント「ハバハバLT」のスペック&デザイン
MSRのハバハバLTは今年2025年にリリースされた軽量且つ快適な空間を確保した山岳用テントです。
スペック
サイズ・重量
- 総重量:1,230g
- 最小重量:1,070g
- 収納サイズ:46×13cm
- フロアサイズ:2.24m×0.81m
- 前室:奥行き0.66m
- 高さ:0.99m
素材
- フライ:ソリューションダイ20Dリップストップナイロン
- キャノピー(壁):ソリューションダイ20Dポリエステルマイクロメッシュ&20Dリップストップナイロン
- フロア:ソリューションダイ20Dリップストップナイロン
価格
- 1人用:¥88,000(税込)
- 2人用:¥99,000(税込)
- 3人用:¥110,000(税込)
デザイン
このテントは自立式のダブルウォールテント、吊り下げ式です。これからテント泊を始めてみようと考えている方にも一度覚えてしまえば簡単に設営できるタイプです。
自立式はペグダウンしなくともテントが倒れることはないので、非自立式と比較して設営は簡単です。

ダブルウォールテントは前室空間を確保でき、さらにフライシートとインナーテントの間に空間があるため、結露がインナーテントに直接影響しにくく、また換気もしやすいためシングルウォールと比較して結露対策が比較的容易です。

吊り下げ式は先にインナーテントにペグダウンをしてから、テントを立てることができるので、スリーブ式と比較するとテントを設営している時に風で飛ばされづらいメリットがあります。
それぞれ一長一短ですが、自立式・ダブルウォールテント・吊り下げ式を備えたテントは特にテント泊初心者の方には安心感のあるモデルといえます。
重量と素材から見る特徴
テントの重量が重いと言うことは素材に厚みがある、また空間が広い=素材が多く使われていると言えます。MSRのハバハバLTは、20デニールの耐久性のある素材を使用していることで、破れに強く、また耐候性に優れた安心感のある山岳用テントと言えます。

またテントのトップ部分にはメインフレームとクロスするように短いポールを本体にセットさせることで、テント内上部の空間が広がるとともに、長辺はほぼ垂直に立ち上がり、テントの大きさに対して内部空間は非常に広く感じます。これはMSRテントの特徴です。


今回のリニューアルでテントポールのハブが高い位置に設定されたことで、短辺側もほぼ垂直に立ち上がるようにデザインされています。これによって懸念されるのが耐風性能ですが、これを犠牲にすることがないように構造が考えられているようです。

この後紹介するサーマレストのエアマット「ネオロフト」は厚さが11.7cmなので、設置するとインナーテントの壁に触れてしまうのが懸念されますが、フロアサイズが長辺で2.24m、短辺で0.81mと拡張されたことで、ネオロフトを広げても、ヘッドスペースや足元に余裕があり、更に周囲に物を置くスペースが確保されています。
リニューアルして更に快適に

インナーテントは就寝時に風が体に当たらないように、インナーテントの約半分は20Dリップストップナイロンが使用され、上部は20Dポリエステルマイクロメッシュが使用されています。これによって通気性が向上されているので結露がしにくく、暑い季節の高所登山でも快適に使用できます。

さらにフライシートを使用しなければ星空を楽しむことができるように視認性の高いメッシュ構造が採用されています。

雪山では広いメッシュのため冷気の侵入が懸念されますが、無雪期であればフライシートの切り込みも少ないので冷気の侵入も少なく、快適に使用できます。

内部空間には短辺と入り口上部にメッシュポケットが備わり、サングラスやスマートフォン、ヘッドライトやモバイルバッテリーなどを収納しておき、何が入ってるか視認することができます。
圧倒的な快適性を約束してくれるエアマット「ネオロフト」

サーマレストはスリーピングギアの開発力に長けたブランドですが、今回リリースされたエアーマットレス「ネオロフト」は、11.7cmの厚みと、柔らかいストレッチニットによる抜群の寝心地を提供するモデルです。
これはバックパッキングコンフォートシリーズに数えられるモデルで、コンセプトは「軽量性と快適性を両立し、優れた断熱性とクッション性で過酷な環境でも快適な眠りを提供するスリーピングパッド」です。
スペック(レギュラーサイズ)
- 重量:710g
- 収納サイズ:24×14cm
- マットサイズ:56×185cm
- 厚み:11.7cm
- 素材:50Dストレッチニットポリエステル/75Dソリューションダイポリエステル
- サイズ展開:レギュラー(R)、レギュラーワイド(RW)、ラージ(L)
- R値:4.7
デザイン

寝心地の良さを追求しただけでなく、サーマレストの特許技術である三角形のバッフルによる2層構造のエアパッドが内蔵されています。これによってエアマット内に空気を溜め込み全身をしっかり支えてくれます。実際に寝てみるとウォーターベッドのような硬すぎず柔らかすぎない快適な寝心地で、さらにR値4.7なので3シーズンで地面の冷えを気にすることなく就寝することができます。


エアマット内部の空気を入れる区画チャンバーにおいては、エアマットの縁が立ち上がるようにデザインされています。これによって寝返りを打ってもマットから落ちにくく体をマットの中央部分に安定させてくれます。

さらに寝返りを打つなどして、マットの上で体をずらしても嫌な音が出ないように、マットレスにかかる圧力に応じて伸縮します。さらにスレによる音が軽減されるように、柔らかで肌ざわりがソフトなストレッチニットポリエステルが採用されています。
MSRのハバハバLT&サーマレストのネオロフトを使った極上空間
今回は実際に尾瀬の見晴キャンプ場でMSRのハバハバLTと、サーマレストのネオロフトでキャンプをしてきました。
普段、縦走登山をするときは、シングルウォールテントやツエルトを使い、マットは山旅の1.2厚ULクローズドセルマットを使用しています。
これらの道具を使った場合の重量は
- シングルウォールテント:630g&1.2厚ULクローズドセルマット:179g=809g
- ツエルト:340g&1.2厚ULクローズドセルマット:179g=519g
と軽量かつコンパクトで、装備の軽量化にインパクトを及ぼします。しかしながら寝心地の良さ、広々とした空間はある程度の諦めが必要で、更には結露対策も必要になります。
対してMSRのハバハバLT:1,070g&ネオロフト:710g=1,780g
は数字を見ての通り約1kgの重量が追加されますが、とにかくラグジュアリーな空間と寝心地の良さ、安心感を得ることができます。



テントにおいてはダブルウォールテントとしてはかなり軽量な部類にカテゴリーされると思いますが、11.7cmのエアマットの上に寝ても広々とした空間を確保されているのはすごいなと感じました。

この心地よさを山の中で楽しめるのはかなり贅沢で、テント泊登山という1つのカテゴリではなく、ラグジュアリーテント泊登山という別のカテゴリを作りたくなるような、全く別の遊びを楽しんでいるような気持ちになりました。
重量が710gのエアマットは、登山装備の軽量化とは逆のアプローチなのですが、例えばテント場へのアクセスが容易な、南アルプスの広河原、長衛小屋、北アルプスの雷鳥沢キャンプ場、体力に自信がある方であれば、北アルプスの唐松岳山荘、八ヶ岳の赤岳鉱泉や行者小屋、オーレン小屋など、テント泊登山初心者向けの場所で使用することで無理なく快適なテント泊を楽しめると思います。