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雪中テント泊と春の雪。仲間と滑る黒姫山・バックカントリースキー

雪中テント泊と春の雪。仲間と滑る黒姫山・バックカントリースキー

3月中旬、春の気配が漂い始めた季節に、バックカントリーへ出かけてきました。向かったのは、東洋一の雪庇で知られる守門岳の西側に位置する黒姫山周辺です。

今回のメンバーは、古民家に暮らし、畑で野菜を育てながら犬や猫、鶏とともに生活し、四季を通じて山を職場であり遊び場としている成田賢二さん。そして、成田さんの友人で映像ディレクターの赤錆さん、私の3人です。

スタート地点は、浅草岳や守門岳といった山々に抱かれた破間川ダムの湖畔。今回の山旅は、山旅旅ウェブマガジンで公開された成田賢二さんの寄稿文「守門岳と破間川」のルートをなぞるような行程を組みました。

この記事で守門岳の歴史や、巨大な雪庇が形成される気候条件に触れてからこの記事をご覧いただくと、このエリアの面白さをより深く味わっていただけるのではないかと思います。

破間川の支流である下黒姫沢を夏であれば右手に見下ろしながら、林道を登っていきます。3月の雪山は、厳冬期のパウダースノーから春特有の雪質へと変わる過渡期にあたります。積雪は日射と気温上昇によって日中に融け、日没後に再び凍結する「メルト&フリーズ」を繰り返すため、早朝は強固なクラストやアイスバーンとなます。

降雨があれば雪面に深い「縦溝(ランネル)」が刻まれ、滑降には高い技術が求められる複雑なコンディションとなります。 雪面が硬く凍りついている時間帯は、シールだけではスリップのリスクが高いため、状況に応じてスキーアイゼン(クトー)を活用したり、急斜面では早めにスキーを脱いでブーツ用アイゼン(クランポン)に履き替えるなど、確実な装備の判断が不可欠です。

ハイクアップの休憩時には、2026年春から新しく販売を開始する行動食「シャリバテKiller」を口にしました。これは60グラムの軽量さで386キロカロリーを補給できるチョコレートです。糖質にはきび砂糖、蜂蜜、パラチノースを使用し、血糖値の急激な上昇を抑えて持久力を維持するよう配合を調整しました。また、ヒマラヤ岩塩による電解質補給に加え、少量の生姜や山椒を含ませることで、行動中の胃腸の働きにも配慮しています。

東京はすっかり暖かく穏やかな気候ですが、ここ新潟県魚沼市にはまだ豊富な雪があり、十分にスキーを楽しめる環境が残っています。目の前には素晴らしい銀世界が広がっていました。

しかし、道中では全層雪崩によって太い木の幹がへし折られている痛ましい痕跡も目にしました。表層雪崩も含め、自然の持つ威力を静かに突きつけられ、改めて気を引き締めて歩を進めます。

途中で足を止め、現在とこれからの雪の状態についてメンバーと話し合いました。雪粒が結合していない軟らかい雪が滑り落ちる「スラフ(点発生雪崩)」の危険性は現時点では低いものの、翌日の気温上昇によっては雪の表面が緩み、発生確率が高まることが予想されます。見上げると、標高の高いルンゼ(岩壁の急峻な溝)には、すでに点発生雪崩の跡が確認できました。

登り始めて約3時間、テント場まで残り2時間という地点に到着しました。標高が上がるにつれて日差しも強くなり、体感温度も上がります。このような状況下では、ベースレイヤーの上に通気性の高いアルファダイレクトのジャケットを羽織る程度の組み合わせが、ちょうどよく機能してくれます。

守門岳は樹齢300年を超えるブナの原生林が広がる新潟県の二百名山ですが、私たちが歩くルートにも美しいブナ林が続いていました。雪に包まれた静かなブナの森を歩く時間は、山行の中でも特に好きなひとときです。

ふと立ち止まると、枯れ木にキノコが生えているのを見つけました。成田さんが確認したところ、これは「ツキヨタケ」。秋にブナなどの枯れ木に重なるように発生し、シイタケやムキタケ、ヒラタケに酷似しているため注意が必要な毒キノコです。 キノコといえば、野生のナメコはお正月頃の初冬であれば、まだ雪に深く埋もれずに採取できることがあります。厳しい寒さの中でも細胞の凍結を防げるのは、表面を覆う「ぬめり」が天然の不凍液の役割を果たすためです。しかし、3月にもなると完全に雪の下に埋没してしまうため、この時期に出会うことは困難です。

今回は、テント場に荷物をデポしてから身軽にスキーへ出かける計画。 やがて到着したテント場は、「こんな場所があるのか」と驚くほど広々とした雪の丘でした。正面には浅草岳が鎮座する、なんとも贅沢なロケーションです。まずは雪を踏み固めて整地し、テントの中から浅草岳の稜線を眺められるよう出入り口の向きを合わせました。

就寝装備には、山旅ショップでも取り扱いを始めたRabのエアマット「Ultrasphere 5」に、モンベルの「ドライシームレス ダウンハガー900 #1」、そしてRabのダウンジャケット「ミシックG」を持参しました。底冷えすることなく、しっかりと睡眠をとれる組み合わせです。

テントの設営を終え、夕方に自分たちのシュプールを眺めようと、標高1328メートル地点から南斜面へ滑り出すことにしました。不要な荷物を置き、身軽になってピークを目指します。 ピークからは東側に黒姫山、次に向かう予定の烏帽子山が見渡せました。ここから標高1115メートルまで、約200メートルの標高差を滑走します。 先行した成田さんが転倒している姿が見え、雪の重さが伝わってきました。

実際に滑り出してみると、やはり春特有の重い雪質です。その後は黒姫山へと登り返し、今度は北面を滑走しました。こうしてハイクアップと滑走を繰り返し、南と北の斜面における雪質の違いを時間差で体感しながら、夕暮れのテント場へと戻りました。

テント場での夜は、赤錆さんが歩荷してくれたクラフトビールと瓶の日本酒で乾杯しました。テントの入り口から望む浅草岳の姿は、言葉にならないほどの美しさです。

雪山のテント泊では、周囲の雪をクッカーに集めて火にかけ、お湯を作るところから始まります。お湯が沸くと、それぞれが持ち寄った食材で夕食の準備に取り掛かりました。

お酒の肴に成田さんが振る舞ってくれたのは、自身で仕留めた鹿肉をお父様が加工したという特製の鹿ジャーキーでした。これが赤錆さん持参の純米吟醸「にいだしぜんしゅ」と見事に調和し、格別の味わいでした。私もダイニーマ素材の軽量なお皿に乾き物を広げ、山奥のささやかな晩餐を楽しみました。そうして夜はゆっくりと更けていきました。

翌朝はのんびりと9時に起床。テントの中で、自身のブランドの展望やお互いの夢、これからの企みなど、尽きることのない話に花を咲かせていると、いつの間にか時計は13時を回っていました。

この日はテント場からそのまま下山ルートに入ります。春特有の癖のある雪質に手こずりながらも、15時には無事に下山を完了しました。 振り返ってみれば、標高差約800メートル、距離にして7キロにも及ぶ道のりを、わずか2時間で駆け下りたことになります。この圧倒的な機動力と楽しさこそがバックカントリースキーの最大の魅力であり、私が一般的な雪山登山から足が遠のいてしまった理由でもあります。

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