南アルプスを南北に貫く、6泊7日の全山縦走の記録をご紹介いたします。畑薙第一ダムを起点に、茶臼岳、赤石岳、荒川三山から塩見岳、仙丈ヶ岳、そして最終地点の甲斐駒ヶ岳へと至る、総距離約113kmのルートを歩きました。
本記事では、大雨の樹林帯から始まった初日の不安や、ガスが晴れて稜線が現れた瞬間の静かな感動など、刻一刻と変化する南アルプスの多様な自然環境をありのままに綴っています。
日ごとの詳細な歩行時間や、上り下りの標高差といった実践的なデータも記載しております。これから南アルプスの長期縦走を計画されている方や、各名峰のルートに関心をお持ちの方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
南アルプス全山縦走 総合記録
総距離: 113.4km
合計行動時間: 71時間05分
総上り標高: 12,458m
総下り標高: 11,401m
1日目:雨降る樹林帯の先にある温かな休息
登頂した山: なし(0座)
行動時間: 4時間42分
距離: 9.4km
上り: 1,088m
下り: 402m


初日はあいにくの大雨に見舞われました。鬱蒼とした樹林帯の中、暗さと不安を抱えながらのスタートとなりましたが、無理をせずに予定していた茶臼小屋までは行かず、手前の横窪沢小屋で宿泊することにいたしました。この判断が功を奏し、非常に快適な小屋で心身ともにしっかりと休めることができました。
2日目:ガスが晴れた瞬間の大きな感動
登頂した山: 茶臼岳、希望峰、易老岳、イザルガ岳、光岳、仁田岳、上河内岳、南岳(計8座)
行動時間: 14時間23分
距離: 25.5km
上り: 2,781m
下り: 2,124m


深夜1時に出発し、朝から強い風にあおられながらガスの中を進みました。しかし、イザルガ岳の手前で思いがけず空が晴れ渡り、目の前に広がった光景に胸を打たれました。10年前に縦走した際からずっと見たかった仁田岳からの眺めも素晴らしく、記憶に残るひとときとなりました。ただ、初日からの体調がまだ順応しきれておらず、15時半に聖平小屋へ到着した頃には深い疲労を感じていました。
3日目:雄大な赤石岳と忘れられない一杯の水
登頂した山: 小聖岳、聖岳(前聖岳・奥聖岳)、兎岳、小兎岳、中盛丸山、大沢岳、赤石岳、小赤石岳(計9座)
行動時間: 12時間19分
距離: 16.9km
上り: 2,308m
下り: 1,958m


この日も深夜1時に出発。強い風の中を歩き続けましたが、初めて訪れた大沢岳からの景色は非常に美しいものでした。道中、百間洞山の家でいただいたお水は、喉の渇きを潤す忘れられないおいしさでした。その後、目前にそびえる赤石岳の巨大な山容に圧倒されそうになりながらも歩みを進めました。標高の上げ下ろしが約2,000mにも及ぶ過酷な行程でしたが、荷物が少しずつ軽くなってきたこともあり、荒川小屋に着いた時には確かな達成感に包まれました。
4日目:荒川三山を越えて心和む山小屋へ
登頂した山: 荒川中岳、悪沢岳、板屋岳、大日影山、小河内岳、前小河内岳、烏帽子岳(計7座)
行動時間: 11時間2分
距離: 16.5km
上り: 1,821m
下り: 1,865m


本日は荒川三山を越え、三伏峠を目指す道のりです。荒川三山の一つである悪沢岳からの景色は、まさに圧巻の一言でした。途中で立ち寄った高山裏避難小屋は、非常に雰囲気の良い山小屋で、そこで味わったコカ・コーラの爽快感は格別でした。起伏に富んだ道を越え、この日は三伏峠小屋のテント場にて羽を休めました。
5日目:未知の稜線歩きと最高のテント場
登頂した山: 三伏山、本谷山、塩見岳、北俣岳、蝙蝠岳、北荒川岳、安倍荒倉岳(計7座)
行動時間: 10時間38分
距離: 20.1km
上り: 1,722m
下り: 1,714m


三伏峠から北上し、塩見岳へと向かいました。初めて歩くこの稜線は穏やかな天候にも恵まれ、塩見岳の山頂から望む360度のパノラマは、今回の山行で最も深く感動した景色の一つです。

南アルプスの主峰に囲まれた蝙蝠岳からの眺望も素晴らしく、味わい深い稜線歩きとなりました。たどり着いた熊ノ平小屋のテント場は、すぐ横に水場があり、目の前には農鳥岳が広がるという理想的な環境です。これまでのテント泊の中でもとりわけ好みの場所となり、心地よく熟睡することができました。
6日目:仙塩尾根を越えて仙丈ヶ岳へ
登頂した山: 三峰岳、横川岳、独標、伊那荒倉岳、大仙丈ヶ岳、仙丈ヶ岳、小仙丈ヶ岳(計7座)
行動時間: 11時間15分
距離: 16.5km
上り: 1,569m
下り: 2,167m



白峰三山へ向かう計画は見送り、三峰岳から長大な仙塩尾根を辿って仙丈ヶ岳へと向かいました。いよいよゴールが近づいてきた実感を胸に小仙丈ヶ岳を経由し、長衛小屋まで一気に下りました。長衛小屋の目の前を流れる川の冷たい水で顔を洗い、長旅の汗を流してしっかりとリフレッシュ。いよいよ翌日の最終日に向けて気持ちを整えました。
7日目:充実感に満ちた甲斐駒ヶ岳でのフィナーレ
登頂した山: 駒津峰、甲斐駒ヶ岳、双児山(計3座)
行動時間: 6時間46分
距離: 8.2km
上り: 1,167m
下り: 1,167m

最終日は甲斐駒ヶ岳へ。山頂に立った瞬間、胸の奥から言葉にできないほどの達成感が込み上げてきました。これほどまでの充足感を味わうのは久しぶりのことで、感慨深い気持ちで景色を見つめました。7日間を通して、様々な気候や登山道の変化を肌で感じ、多くの学びを得ることができました。心から満足のいく、素晴らしい全山縦走の旅となりました。

